放射性医薬品市場戦略レポート2026:競合状況、成長要因、投資リスク
放射性医薬品市場分析:世界市場規模予測と精密医療・核医学の成長機会
放射性医薬品市場は、がんをはじめとする疾患の精密診断・標的治療への需要拡大を背景に、成長が見込まれている。QYResearchが発表した市場調査レポートによると、世界市場規模は2025年の11,150百万米ドルから2026年には12,080百万米ドルへ拡大し、2032年には20,510百万米ドルに達すると予測されている。2026~2032年の年平均成長率(CAGR)は9.2%である。市場拡大を支える要因として、PETやSPECTを用いた画像診断の普及、診断と治療を組み合わせる「セラノスティクス(Theranostics)」の進展、医療用放射性同位元素の供給体制整備が挙げられる。一方、核種の供給制約や短い物理的半減期に伴う物流上の課題も残されており、安定供給と製造・流通インフラの構築が今後の重要なテーマとなる。
■ 放射性医薬品の定義と主な用途
放射性医薬品とは、医療用放射性同位元素を含む医薬品であり、主に疾病の診断、治療、研究に使用される。放射性核種が放出する放射線を利用し、PETやSPECTなどによって体内の機能や標的組織の状態を画像化するほか、特定の組織や細胞に放射線を届けることで治療効果を得る。代表的な核種には、テクネチウム-99m、ヨウ素-131、フッ素-18などがある。診断用製剤は病変の位置や機能を把握するために用いられ、治療用製剤は標的に放射線を届けることで疾患への治療効果を目指す。放射性医薬品は、核医学と分子標的技術を結びつける医療分野として、がんや心血管疾患などの診療に活用されている。
■ 放射性医薬品の世界市場規模と将来予測
QYResearchの市場調査によると、放射性医薬品の世界市場は2025年に11,150百万米ドル、2026年に12,080百万米ドルとなり、2032年には20,510百万米ドルに拡大すると予測されている。2026~2032年のCAGRは9.2%であり、精密診断と標的治療の需要拡大を背景に、市場の持続的な成長が見込まれる。
放射性医薬品市場規模予測
2025年:11,150百万米ドル
2026年:12,080百万米ドル
2032年:20,510百万米ドル
2026~2032年CAGR:9.2%
市場成長の背景には、がん診療における画像診断の活用拡大や、放射性核種を用いた治療法の進歩がある。特に、診断結果に基づいて治療対象を選定し、治療後の反応を評価するアプローチは、個別化医療の発展と結びついている。ただし、市場の成長は医薬品の研究開発だけで決まるものではなく、核種の製造能力、医療施設の設備、規制当局による承認、供給網の整備にも左右される。
■ 画像診断需要の拡大とPET・SPECT技術の進歩
放射性医薬品市場を支える重要な要因の一つが、PETやSPECTを活用した核医学画像診断の普及である。これらの技術は、臓器や組織の形態だけでなく、代謝や機能に関する情報を取得するために用いられる。原文で引用されている『中国核医学発展報告2024』では、世界の腫瘍発生率が年平均2.3%上昇しているとされており、精密診療の需要拡大が市場の背景として示されている。
また、原文によると、世界のPET/CT装置の設置台数は12,000台を超え、フッ素-18-FDGなどの診断用放射性医薬品の需要を支えている。同資料では、同製剤が世界の放射性医薬品市場の25.4%を占めるとされる。フッ素-18-FDGは、ブドウ糖代謝を利用して病変の評価を支援する代表的な診断用製剤である。今後も診断技術の普及が需要を支える可能性がある一方、地域による装置の導入状況や核医学専門人材の確保が、利用機会を左右する要因となる。
■ セラノスティクスの進展と治療用放射性医薬品の成長
セラノスティクス(Theranostics)は、診断と治療を組み合わせ、患者ごとに適した治療方針を検討するアプローチである。代表例として、[68Ga]-DOTATATEによる診断と[177Lu]-DOTATATEによる治療の組み合わせが挙げられる。神経内分泌腫瘍の診療では、標的の発現状況を画像で確認し、その標的に結合する放射性医薬品を用いて治療する仕組みが活用されている。
また、ノバルティスの前立腺がん治療薬[177Lu]-Pluvictoは、治療用放射性医薬品の商業的可能性を示す事例として原文で紹介されている。こうした治療法の発展により、放射性医薬品市場では診断用製剤だけでなく、治療用製剤や診断・治療を一体化した製品群の重要性が高まっている。ただし、臨床での使用拡大には、有効性と安全性の評価、適切な患者選択、医療施設の対応能力、核種の安定供給が必要となる。
■ 主要企業と地域別市場の特徴
QYResearchの2025年レポートによると、2024年にはノバルティス、キュリウム・ファーマなどを含む世界トップ5メーカーが市場シェアの63.0%を占めた。また、がん領域が最大の応用分野となり、市場の65.0%を占めている。これは、放射性医薬品の需要が腫瘍の診断や治療を中心に形成されていることを示している。
地域別では、原文によると北米が技術面の優位性などを背景に世界市場の52%を占める。一方、中国市場は成長率の高さが特徴とされ、2023年の市場規模は80億元を超えたとされる。各地域の市場形成には、核医学施設の整備状況、医薬品の承認制度、研究開発への投資、核種の製造・輸送能力などが影響する。今後の競争では、製品の臨床的価値に加え、供給体制と地域ごとの医療インフラへの対応力が重要となる。
■ 核種の供給制約と物流・製造上の課題
放射性医薬品市場の拡大を制約する要因として、医療用放射性同位元素の供給集中と物流上の制約が挙げられる。原文によると、テクネチウム-99mの供給は、その親核種であるモリブデン-99の生産体制に依存しており、世界のモリブデン-99供給の約80%が5基の老朽化した原子炉に由来するとされる。また、2024年には北米の原子炉の点検が世界的な供給不足につながったと報告されている。
さらに、フッ素-18の物理的半減期は約110分と短いため、製造から投与までの時間管理が重要となる。輸送距離が長い場合、放射能の減衰によって使用可能量が減少することから、製造施設と医療機関の地理的な配置が供給効率を左右する。こうした課題への対応には、原子炉や加速器を活用した核種製造体制の強化、製造・配送工程の最適化、地域の核医学施設との連携が求められる。
■ 技術革新と国産化が生み出す新たな市場機会
中国では、医療用同位元素の供給体制強化や関連産業の整備が進められていると原文は指摘している。中国同辐のテクネチウム-99m製剤は市場シェア40%超とされ、東誠薬業のフッ素-18-FDGも同等性評価を通過したと紹介されている。こうした動きは、核種や製剤の供給源を多様化し、輸入依存の低減を目指す取り組みとして位置づけられる。
研究開発面では、新たな治療用核種の開発も市場機会の一つとなる。ただし、原文に記載された「イットリウム-161」「ニオブ-177」については、核種名や研究開発段階の正確性を確認する必要があるため、ここでは個別の臨床応用を確定的な事実として扱わない。一般に、新規核種の実用化には、製造方法の確立、放射化学的な品質管理、安全性・有効性の検証、規制当局の承認が必要となる。研究開発の進展を市場成長につなげるには、核種製造から医薬品製造、流通、臨床利用までを連携させる産業基盤の整備が重要である。
■ まとめ:精密医療を支える供給体制と産業基盤の強化
放射性医薬品の世界市場は、2025年の11,150百万米ドルから2032年には20,510百万米ドルへ拡大し、2026~2032年のCAGRは9.2%になると予測されている。PET・SPECTによる画像診断の普及に加え、セラノスティクスを活用した治療用製剤の発展が、市場の成長を支える要因となる。
一方、核種の供給集中、短い物理的半減期、輸送体制の制約、製造・品質管理の難しさは、安定的な市場拡大に向けた重要な課題である。今後は、核種の製造能力を確保するとともに、地域ごとの核医学施設の整備、臨床研究の推進、医薬品の供給網強化を一体的に進める必要がある。放射性医薬品市場の持続的な発展には、技術革新と産業インフラの成熟を結びつけ、精密診断と標的治療をより多くの医療現場で実現することが求められる。
本記事は、QY Researchが発行したレポート「放射性医薬品―グローバル市場シェアとランキング、全体の売上と需要予測、2026~2032」 を紹介しています。
◇レポートの詳細内容・無料サンプルお申込みはこちら
https://www.qyresearch.co.jp/reports/1607771/radiopharmaceutical
会社概要
QYResearch株式会社は、2017年に日本・東京で設立された市場調査・コンサルティング会社です。グローバル市場を対象に、市場調査レポート、業界分析、競合調査、IPO支援、カスタマイズリサーチなど幅広いサービスを展開し、各業界の市場構造や成長性、競争環境を多角的に分析しています。豊富な調査ネットワークと最新データを活用することで、企業の経営戦略策定、新規事業開発、市場参入判断を支援し、実践的かつ信頼性の高いインサイトを提供しています。
【本件に関するお問い合わせ先】
QY Research株式会社
URL:https://www.qyresearch.co.jp
日本の住所:〒104-0061東京都中央区銀座 6-13-16 銀座 Wall ビル UCF5階
TEL:050-5893-6232(日本);0081-5058936232(グローバル)
マーケティング担当 japan@qyresearch.com